『神様のメモ帳』(杉井光)

 読了。これは良いラノベ
 クスリに絡む事件に巻き込まれた主人公の物語を、引き籠もりの探偵が解きほぐしていく物語。ミステリとしては特筆するようなできではないんだけど、ニートとして群れているキャラ達と探偵役の少女の描写が良くて、何より主人公の内面描写が素晴らしい。生きる目標を持ってない主人公が事件に巻き込まれて変わっていくときの描写が何とも言えない。ああ、ちゃんと内容に触れるとネタバレになるのが何とも。
 池袋ウエストゲートパークとある意味では似ているんだけど、あの説教臭さがまったくないというか、この時代感は素晴らしい。石田衣良が何か少し上から見ている視線なのに対して、杉井光は主人公と同じ目線に立っているというべきか。
 しかし、この作品に高校生時分に出会えたのなら幸せじゃないかと思う。舞台が渋谷なので、田舎方面だと空気感が分からなくて理解できないところがあるかもしれないけど、この空気感というかやるせなさは染みる。