『市場リスク 暴落は必然か』(リチャード・ブックステーバー)

 原題は "A Demon of our own Design : Markets, Hedge Funds, and the Perils of Financial Innovation" by Richard Bookstaber。
 MIT から投資銀行のトレーダーになって、その後リスク管理のマネージメントをしていた著者による、ブラックマンデーからネットバブルやサブプライムまで金融界の大きな動きについて解説した本。途中リスクマネジメントの例としてスリーマイルやスペースシャトルの解説してるところは冗長というか要らない。金融用語の解説はほとんど入らないので、読む前に必要な知識を得ている必要有。
 著者は当然のごとく投資銀行からヘッジファンドまで自由な金融活動を擁護してるけど、我田引水というか自分で自分を賞賛しているように思える。
 投資銀行からヘッジファンドが抱える問題は、結局他人の金で博打しているということにつきると思うんだけど。投資銀行なりヘッジファンドは商業銀行なり年金基金なりから資金を得て投資してリターンを得る構造になってて、トレーダーはレバレッジして巨額の利益を叩き出して巨額の報酬を得る。が、損失を出しても肩代わりすることなく、せいぜい馘を切られてブラックリストに載る程度で済む。巨額の損失は、政府が銀行を救うという名目で税金によって補填される。実際に博打を打って一生遊んで暮らせる金を手にするのは、資金に見合ったリスクを背負ってないトレーダーと経営層になっている。この構造に手を入れない限り、また巨大なバブルは起こるんだろう、多分。