『泣き虫しょったんの奇跡 完全版』(瀬川晶司)

 完全版なのは単行本に加筆した文庫本だから。一ヶ月くらい前に読んでたけど、書き忘れてた。
 サラリーマンから将棋のプロ棋士になった人の自叙伝。だけどあまりに文章が熟れてるのでライターが入ってるのではないかと思える。本人のブログは http://segawa-challenge.at.webry.info/ だが、短文が多くてこの本から受ける印象と違う。
 これ読む限り 26 で奨励会を追い出されたのは、どう見ても不摂生な生活が原因だよなあ。一人暮らしして遊びを覚えたのが致命傷というか。将棋に集中できる環境が逆にスポイルしていた感というか、本来将棋に充てるべき自由な時間を他のことに使ってしまっていて、追い出される前後は読んでて胃がひりひりする。
 終わり近くに出てくるプロを早々にあきらめた幼馴染みの別の本への寄稿が、この本の内容を物語っていると思う。


「彼が奨励会を年齢制限でやめることになった時、僕は責任を感じた。僕と出会わなければ厳しい将棋の道へ進むこともなく、他にもっと楽しい人生を送れたのではないかと思った。しかし今回のプロ入りでそんな思いはチャラになった。プロ入りすることが彼にとって、いいことなのか悪いことなのか分からない。でも、テレビで涙ぐんでいた彼を見て、良かったんだなと思った」